はじめに
営業を始めた頃の私は、商談前になるといつも緊張していました。
「質問に答えられなかったらどうしよう」
「説明を間違えたらどうしよう」
「沈黙になったら気まずい」
商談が始まる前から失敗する場面を想像し、必要以上に不安を大きくしていたのです。
営業を10年以上続けた今でも、大切な商談の前には緊張します。
ただ、以前と比べて、緊張に振り回されることは少なくなりました。
それは、緊張をなくそうとするのではなく、緊張していても商談を進められる準備をするようになったからです。
今回は、私が商談前に実践している7つの準備をご紹介します。
①商談の目的を1つに絞る
商談前に緊張する原因の一つは、
「全部うまくやらなければならない」
と考えてしまうことです。
商品を分かりやすく説明する。
お客様の課題を聞く。
良い印象を持ってもらう。
次回の約束を取る。
契約につなげる。
すべてを一度に成功させようとすると、頭の中が整理できなくなります。
そのため、商談前には、今回の目的を一つ決めます。
例えば、初回商談なら、
「お客様の課題を理解する」
を目的にします。
提案商談なら、
「提案内容への不安を確認する」
でもよいでしょう。
目的が明確になれば、商談中に何を優先すればよいか判断しやすくなります。
②お客様の情報を確認する
相手のことが分からないまま商談に臨むと、不安は大きくなります。
反対に、事前に情報を確認しておくと、会話のきっかけや質問を考えやすくなります。
私は商談前に、最低限次の内容を確認します。
- 会社の事業内容
- 主な商品やサービス
- 最近の取り組み
- 商談相手の部署や役割
- これまでのやり取り
- 今回の面談に至った背景
すべてを細かく覚える必要はありません。
大切なのは、お客様のことを何も知らない状態で商談に入らないことです。
情報が少しあるだけでも、「何を話せばよいか分からない」という不安を減らせます。
③質問を3つだけ準備する
商談前に、聞きたいことをたくさん準備する人もいると思います。
しかし、質問が多すぎると、
「すべて聞かなければならない」
という新しい緊張が生まれます。
そこで私は、特に確認したい質問を3つ程度に絞るようにしています。
例えば、初回商談なら次のような質問です。
- 今回ご相談いただいた背景を教えていただけますか
- 現在、特に困っていることは何ですか
- 今後、どのような状態を目指していますか
商談中の会話によって、質問の内容や順番は変わっても構いません。
質問を準備する目的は、台本どおりに進めることではなく、会話が止まった時に戻れる場所をつくることです。
④最初の一言を決めておく
商談では、始まる直前が最も緊張することがあります。
最初に何を話すか決まっていないと、あいさつの段階から焦ってしまいます。
そのため、冒頭の言葉だけは事前に決めておきます。
例えば、
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずは今回お話を伺うことになった背景から、教えていただいてもよろしいでしょうか」
という形です。
最初の一言が決まっていれば、落ち着いて商談を始められます。
商談が始まってしまえば、お客様の話を聞きながら自然に会話を進められることも少なくありません。
最初から最後まで完璧な台本を用意するより、入り口だけ準備しておく方が実践しやすいと思います。
⑤うまく答えられない時の言葉を準備する
営業初心者が緊張する理由の一つに、
「質問されたら、その場ですぐに答えなければならない」
という思い込みがあります。
しかし、確認が必要な内容まで無理に答える必要はありません。
私は、分からない質問を受けた時に使う言葉をあらかじめ決めています。
例えば、
「正確な情報を確認したうえで、改めてご回答いたします」
「現時点では判断できないため、社内に確認して本日中にご連絡します」
という伝え方です。
答えられないこと自体よりも、曖昧な情報を伝えたり、確認せずに約束したりする方が問題です。
逃げ道となる言葉を準備しておくと、「何を聞かれても即答しなければならない」という緊張を減らせます。
⑥商談の成功条件を下げる
商談前に、
「絶対に契約を取らなければならない」
と考えると、緊張は大きくなります。
しかし、特に法人営業では、1回の商談だけで契約が決まらないことも多くあります。
初回商談なら、
- お客様の課題を一つ理解できた
- 次回提案する内容が決まった
- 次の面談日を設定できた
だけでも、十分に前進しています。
商談の成功を「契約」だけで判断せず、その商談で進めたい一歩を明確にすることが大切です。
成功条件を現実的に設定すると、目の前のお客様との会話に集中しやすくなります。
⑦商談直前に新しいことを詰め込まない
商談直前になると、不安から資料を見直し続けたり、新しい情報を調べたりしたくなることがあります。
私も以前は、開始直前まで資料を読み込み、かえって頭の中が混乱していました。
今は商談の直前になったら、新しいことを覚えるのではなく、次の3点だけを確認します。
- 今日の目的
- 最初に聞く質問
- 商談後の次の行動
その後は、ゆっくり呼吸をして、姿勢を整えます。
最後の数分は、知識を増やす時間ではありません。
準備した内容を使える状態に整える時間です。
商談中に緊張した時の対処法
どれだけ準備しても、商談中に緊張することはあります。
そんな時は、無理に緊張を隠そうとせず、次の行動を意識します。
ゆっくり話す
緊張すると話す速度が速くなります。
普段より少し遅く話すことを意識するだけでも、落ち着きを取り戻しやすくなります。
質問して相手の話を聞く
自分が話し続けると、緊張が強くなることがあります。
質問をして、お客様の話を聞く時間をつくることで、自分の呼吸や考えを整えられます。
メモを確認する
準備した質問や要点を見直せば、会話を立て直せます。
商談中にメモを見ることは、悪いことではありません。
むしろ、確認しながら丁寧に進める姿勢として受け取っていただけることもあります。
緊張は悪いことではない
営業で緊張すると、
「自分は営業に向いていないのではないか」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、緊張するのは、その商談を大切に考えているからでもあります。
何も準備せず、相手への関心もなければ、緊張することも少ないでしょう。
緊張を完全になくす必要はありません。
大切なのは、緊張していても、
- 相手の話を聞く
- 分からないことを確認する
- 約束したことを守る
という基本的な行動を続けることです。
落ち着いて見える営業も、内心では緊張していることがあります。
違いは、緊張しないことではなく、緊張した時に戻れる準備を持っていることだと思います。
私が商談前に最後に確認すること
私は商談前に、
「上手に話そう」
ではなく、
「相手のことを一つでも多く理解しよう」
と考えるようにしています。
自分を良く見せようとすると、言葉や反応が気になります。
一方で、お客様を理解することに意識を向けると、自然に質問が生まれ、相手の話にも集中できます。
営業の主役は、営業担当ではありません。
目の前のお客様です。
この考え方を持つようになってから、商談前の緊張との付き合い方が少しずつ変わりました。
まとめ
営業で緊張しないために商談前にやることは、次の7つです。
- 商談の目的を一つに絞る
- お客様の情報を確認する
- 質問を3つだけ準備する
- 最初の一言を決めておく
- 答えられない時の言葉を準備する
- 商談の成功条件を下げる
- 直前に新しいことを詰め込まない
緊張を完全になくすことは難しいかもしれません。
しかし、準備によって不安を小さくし、緊張していても商談を進められる状態をつくることはできます。
最初から完璧な商談を目指す必要はありません。
お客様の話を一つ丁寧に聞き、次につながる行動を一つ決める。
その積み重ねが自信となり、少しずつ落ち着いて商談に臨めるようになるはずです。

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